今話題のこの本、ようやく読んだ。書評、というより感想を書く。
この本は、競争と公平感、そして労働をテーマに、経済学の観点による小論をまとめたものだ。
多くの人の間で関心が高そうな身近な話題がいくつも盛り込まれている。それに経済学といってもやさしく書かれているため、経済学部の学生や、経済学を知らない一般の人にも広くおすすめできる。分量も特に多いというほどのものではなく、手軽に読める本だ。私としては、特に市場経済のデメリットを学校で強調されて学んできたと思われる一般の人に読んでほしい(だから、他の人がさんざんこの本を紹介しているのに、わざわざ私がこのブログで取り上げた)。また、最新の研究動向を踏まえた内容なので、私のような中途半端な知識しか持たないヘナチョコ経済学士には十分勉強になる。だいたい、せっかく経済学部で経済学的思考を学んでも、卒業後経済学の書物を継続して読まないと、経済学的思考がなまってしまってよくない。
格差や非正規、最低賃金等の問題も、本書のような経済理論や実証分析に基づく政策論議を期待する。私が大学で経済学を学んでいた頃、ある先生が「みなさんは経済学を勉強して、どの政党が言っていることが正しいのか判断できるようになってください」とおっしゃっていた。どうしてこのようなことを言う先生がいらしたかというと、経済学的に考えるとナンセンスな主張を政党が展開することがあるからだ。
著者の大竹文雄氏は、大阪大学教授。専門は労働経済学。
[文献]
◇ 大竹文雄(2010)『競争と公平感-市場経済の本当のメリット-』中公新書。