2010年11月16日火曜日

星野哲郎

星野哲郎が亡くなったとニュースで知った。とても悲しい。私が最も好きな作詞家の一人だった。演歌ファンをやっていると、訃報に接することが本当に多い。

一部メディアは、星野哲郎を「昭和の日本を彩った」という演歌作家にお馴染みの枕詞で伝えているが、この人はもちろん平成に入ってからもいい詞をたくさん書いていた。私が演歌ファンになったのも、平成期に星野哲郎が書いた新曲に出会ったことが大きい。

メディアが紹介している代表曲は『黄色いさくらんぼ』(スリー・キャッツ)『アンコ椿は恋の花』(都はるみ)『函館の女』(北島三郎)などだが、私などは『出世坂』(島津亜矢)や『寿宝船』(山口瑠美)などが個人的なお気に入りだった。あの世界観、詞中の人物が実に生き生きとしていた。

星野哲郎と言えば、『出世街道』(畠山みどり)や『いっぽんどっこの唄』『三百六十五歩のマーチ』(水前寺清子)のように、イケイケどんどんの詞が多いのかなと勝手に思っていた時期があるのだが、そんな時に、あの映画『男はつらいよ』の主題歌を書いていたのもこの人だったと知った時は驚き、さすがに人生への洞察力が鋭いと感服した。あの、努力が報われない男の悲哀を書いた1番のサビの部分、しかもあそこが、あの詞の中で星野哲郎自身が最も気に入っている部分なのだそうだ。

あれだけのヒット曲をたくさん書き、多くの歌手を世に送り出した人なのだから、今回の訃報はもっと大きく取り上げられてもよさそうに思えるのだが、残念だ。もっとも、あまり騒がれたくはないという思いもあるが。

演歌の大作家が次々と他界していく。せめて船村徹には長生きしてほしいな。